第二十六話 妖怪攫い

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「あの事件が起きてから、この町も最近物騒になってきましたよ。新宿と池袋に棲んでいる妖怪たちも怯えてしまって……」 「そんなにですか?」 「はい……。あれだけ騒ぎになると、こちらの方面にも噂が流れてきます」 「そうですか……」  本題に入ると、彼は犯人を目撃した時の状況を詳細に教えてくれた。 「あれは……バイト帰りのことでした。いつも使っている道を歩いていると、人通りのない路地裏の方から悲鳴が聞こえたんです」 「悲鳴……ですか?」 「はい……。すぐ目の前にあったので、俺は壁の陰から一部始終しました。路地裏の方で全身に黒いマントを羽織った二人組がいて、地面に(うずくま)っている妖怪をボコボコにしていたんです……。その中の一人は、相手が気を失うまで痛めつけた後、そのまま(さら)って行きました……」  そこまで話すと、彼は顔を青ざめ、震える体を抑えようと両手で抱き締める。  よっぽど残虐(ざんぎゃく)な光景だったのだろう。  少し落ち着きを取り戻した彼は話の続きをする。 「一人だけ、大鎌を持った特徴的な妖怪でした。助けたかったのですが……恐ろしくて体が動きませんでしたよ」 「!」 『大鎌』というワードが出て来ると、沙希はあることを思い出した。  隣でずっと無言だった風夜も同じく気づいたらしく、沙希と風夜はお互いに顔を見合わせる。
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