第二十六話 妖怪攫い

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「まさか……」  沙希は二ヶ月前に起きた連続通り魔事件を思い出す。  その事件の犯人は人間ではなく、鎌鼬の刹那の仕業だとわかった。  祐介が深手を負わせたまではよかったが、刹那はそのまま逃避した以来姿を現さなくなったのだ。 「あの。その人物の顔とか見ましたか?」  確証はないが、もしその黒マントの正体が刹那だったら、また動き出した可能性が高い。 「すみません……。その二人組は顔に仮面をつけていたので、素顔までは見られませんでした……」 「そうですか……。ありがとうございます」  この短時間でいい収穫ができた。  聞き込みを終え、沙希たちはこの情報を祐介たちに報告した。   ✿ ✿ ✿  カラオケ店を後にした沙希と風夜は、ネオン街を歩いている。 「妖怪に情報を貰えるなんて……なんか新鮮だな」  沙希は今までにない経験に感動する。 「そう言えば気になっていたんだけど。下界に棲んでいる妖怪って、異界の住民なんだよね? どうして下界で人間みたいに暮らしているの?」  沙希はずっと疑問に思っていたことを風夜に訊く。 「大昔に人間の世界に興味を持った一部の妖怪が下界に降りたんだ。昔は緑の自然が多かったから、妖怪たちはそれぞれ自分たちの住処を作って暮らして、子孫繁栄を繰り返したんだ」 「へぇー」
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