第二十六話 妖怪攫い

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 祐介たちの方も未だに犯人は捕まらず、痕跡(こんせき)すら掴めなかった。  下界に棲んでいる妖怪にも聞き込みをしているが、有力な情報は手に入らなかった。  聞こえてくるのは、闇色のマントを羽織った二人組の妖怪が下界を騒がせている声が多かった。  中では、その二人組の妖怪が一般妖怪を上回るほどの上級妖怪だと噂が立っていた。  ――ピロリロリン  テーブルに置いていた沙希のスマホに着信ベルがなった。  沙希はスマホを手に取ると、画面には『南雲さん』と表示されていた。 「もしもし」 『ああ、西山さん』 「南雲さん。どうしたんですか?」 『ある妖怪から有力な情報が手に入ったんだ。すまないが早急に俺のマンションに来てくれ。今、車で西山さんのマンションに向かっているから』 「本当ですか! わかりました。すぐそちらに向かいます」  返事をすると、通話が切れる。 「風夜、行こう」 「おう……」  風夜は駆け足で玄関に向かう沙希を追う。  離れた所から高く飛び、沙希の肩の上に風夜は見事に着地した。  バタンと玄関の扉の閉まる音が誰もいなくなった自室に響くのであった。   ✿ ✿ ✿  祐介が運転する車で、彼が住居するマンションに到着する。  玄関の前で陽向が待っていて、沙希と風夜はリビングに案内された。  リビングに入ると、長机の前で正座している二十代前半の女性がいた。  彼女を見て、この人は祐介が電話で話した妖怪だとわかった。
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