第二十三話 訪問

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「ささ、狭い家ですが、どうぞどうぞ」 「狭くて悪かったな」  おもてなしで言っているとはいえ、流石(さすが)に祐介は不満そうだ。 「じゃあ、広いって言えばよかった?」 「……それもな」 (ふふっ……)  沙希は仲睦まじい会話に微笑ましくなる。   ✿ ✿ ✿  リビングに案内されると、沙希と風夜は白色のソファの上に座る。  祐介と陽向はお菓子と飲み物を用意すると言って、席を外している。 「…………」  座っているだけではもどかしく、沙希は祐介の住む部屋を見渡す。 (綺麗な部屋だな……)  白で統一された部屋は綺麗に整頓されており、窓から差し込む陽の光が明るく照らしている。  沙希は廊下を歩いた時、一瞬しか見られなかったが、祐介の寝室であろう部屋にパソコンや難しそうな本が並んだ本棚など置いてあった。  この部屋から溢れる生活感に、祐介の謹厳実直(きんげんじっちょく)な性格を表していた。 「暑い中来てくれてありがとう」  しばらくすると、麦茶とお菓子を乗せたお盆を持ってきた祐介は、沙希と風夜の前に置く。 「いいえ」  沙希は出された麦茶を口に流し込み、暑さで渇いていた喉を(うるお)す。 「あの。二人住まい何ですか?」 「一応な」 「一応って何だよ~、もう何年の付き合いだと思ってんだよ!」  祐介の隣に座っている陽向がふくれっ面に言う。
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