リッパー・イン・ザ・樹海

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「続いてのニュースです。特殊詐欺の被害件数が今なお増加しており…」 またこの話か、以前どこかの局で聞いたようなニュースが今日もテレビの中で喚いている。 「なお詐欺グループの数人は既に捕まっており…」 今月何回見たかももう覚えてないような犯人たちの顔が連なっている、その見るからに悪人な面構えから最初は笑うことが出来たがこうも何回も見せられるとただただ見飽きたという感想しか出なくなる。 最近の日本は退屈に溢れている。日常に溢れる些細な刺激というものもほとんどなく窓に目をやればあるのは鈍色の雲がかかった空だけ、自らが何かしらのハプニングを起こせばそんな日々も払拭することが出来るだろうがそれが出来るやつはそういない。だから皆テレビやスマホを凝視しハイエナのように新たな養分を狙っているのだろうかとふと考えてみる。 「続いてのニュースです。〇〇市の樹海で5人もの女性が埋められて発見されました。警察は現在も調査をしています。」 いつも通りのニュースに続き流れたそれに俺は耳を立てた。殺人事件は毎日のように報道されているがこんな一気に5人も、しかも女性のみとなるととても珍しいだろう。 「おいおいまじか……」 俺はその非日常的なニュースに釘付けになっていた。犯人はどんな人物か?動機はなんだ?被害者と面識はあったのか?傍観者目線から見るとこういう考察が出来てとても面白い、現にネットでは早くも考察合戦が開戦されていた。 「それにしても警察ももう少し早く見つけれていれば被害者も減らせただろうに、まぁ見つけにくいだろうし仕方ないのかな」 驚きは保ちながらも自分は狙われない、そんな余裕から俺は警察にぼやきを入れながらも出勤した。けど今思えば今日は出かけるのはやめた方が良かったのかもしれない。そう思えるほど今日は肝が冷えた大変な日だったんだ──。
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