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海堂亜蘭
亜蘭は線の細い奴やった。
昔からよく虐められるけど、本人は理由が分かってないやつ。特に何もしてないのにどつかれたり、意地悪をされて黙って泣かされとるのがアイツやった。
俺はアイツの近所に住んでいたというだけで、幼馴染と見なされたただの同級生だ。別に構いたくもなくて、特に親しい自覚もないんやけど、気がつけば俺はアイツの「係」にされとった。やけど、何故か目が離せなくなっとったのも事実やった。
「なぁ、この問題どないして解くん」
亜蘭が俺のほうを見上げている。そもそも昼休みにわざわざ勉強をしたくなる心理がわからん。
「なぁええやん、おせーてよ偲佑、頭ええんやから」
何でオカンこんな歯の浮くような名前つけたんやろな。お陰で呼ばれるたびくすぐったくてかなわん。しかもお前は隣のクラスやろ?刺さっとる視線が痛い。びーえる言うんか、「アイツらデキとんでぇ」いうのんがビシバシ来よる。
「…3」
「え?なに」
「…せやから3やねん、そこの、答え」
えー、式もおせーてよ偲佑〜、とゴネるのを「昼休み終わるから帰り」と無理矢理、教室の外へ連れ出した。
…コレが嫌やないから、困っとるねん。
午後の授業は殆ど寝とった。古文とか、何のためにあるのか分からん。窓を開けっ放しにしておいたから、気持ちええ風が入り放題や。スマンけどこれには抗えん。
ドスンと後頭部に重たいもんを置かれた衝撃で目が覚めた。野球部の航平が俺の顔を覗いとった。もしかしてお前、あのでかい鞄を俺の頭に載せとんのかい。首が死んだらどないすんのや。
「あー、寝とった?LHR、終わったで」
とった?やなくて起こしたんやろがい。俺はわざと鬱陶しそうに欠伸してから航平を見上げる。
「ん」
航平が俺の顔の変なとこを指してケラケラ笑っとる。
「なん?おま、笑うな」
若干本気でムッとしたら、もっと笑いやがった。
「ヒゲwwww1本だけ伸びとるで?笑うww」
「構うな。ほっとけ」
お前の青い坊主頭のほうが笑える、と言うのは最大限の友情で我慢したった。
亜蘭、何しとるんかな。
女の子と話しとるやろか。
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