プロローグ すべての始まり

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プロローグ すべての始まり

「りゅうちゃん?りゅうちゃんどこ?…‥りゅうちゃ、もう‥‥うえーん、りゅうちゃーんどこー?」  わたしは何度も声を上げる。  涙がこぼれて、鼻水もずるっと出て来て、それでも龍ちゃんの姿は見えない。  人混みがたくさんで。  その中に埋もれてしまうみたいで恐くて仕方がない。  どうしよう。どうしよう。りゅうちゃんとはぐれちゃったよー。  わたしは小学校に入って最初の夏だった。  待ちに待った夏祭り。  わたしと龍ちゃんは近くである龍之口神社の夏祭りにふたりだけで行くことに。  両親が二人で行ってもいいと言ってくれたからだ。  その日もいつものように佐々木内科、小児科クリニックに来ていたわたしは、待ちきれないと早くから朝顔もようの浴衣を着ていた。  やっと祭りが始まる時間が近付いた。  「糸、お祭りに行こ」  「うん、りゅうちゃん」  おばさんが龍ちゃんにしっかり面倒見なきゃダメよって言う。  「わかってるよ。心配ないから」  龍ちゃんは、口をとがらせる。  ママがわたしに龍ちゃんの言うことをしっかり聞いてねって何度も言った。
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