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「わかってるよママ」
わたしも口をとがらせる。
「早く行こ」
龍ちゃんがわたしの手を引っ張った。
「うん、りゅうちゃん」
赤い鼻緒の下駄を履いて龍ちゃんと駆け出す。
龍ちゃんは、赤色のTシャツと白い半ズボンを着ていて、玄関を出ると立ち止まった。
龍ちゃんは、いつも以上に眉を寄せた顔でわたしを見た。
そしてわたしに何度も言う。
「いいか、糸。俺の手を絶対に離すんじゃないぞ」
「うん、りゅうちゃんわかってるよ。絶対に離さないよ」
わたしは、お祭りに龍ちゃんと行けるのがうれしくてニコニコしながら答える。
龍ちゃんも、それを聞いてにっこり笑った。
龍ちゃん笑うと子犬みたいだなって思った。
わたしは龍ちゃんに手をしっかりと繋がれる。
神社に向かいながら龍ちゃんが言う。
「よし、でも、もし、もしも、俺とはぐれたら、いいか糸、神社の拝殿ってわかるか?」
「はいでん?」
「ああ、鳥居をくぐってずっと一番奥にあって、賽銭を入れる箱があるだろう?」
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