195人が本棚に入れています
本棚に追加
いつの間にかつないでいた手がなくなっていて、自分一人だけの手になっていて。
「りゅうちゃーん。りゅうちゃーん。どこ?」
わたしは何度も、何度も龍ちゃんを呼ぶ。
でも、周りを見回しても人混みばかりで、龍ちゃんは見つからない。
「りゅうちゃーん。りゅうちゃーん。ぐすっ、りゅ、ちゃん。どこ行ったの」
わたしは大きな声で龍ちゃんって呼んでみる。
でも声は人混みに飲み込まれて龍ちゃんはちっとも見当たらない。
わたしは半べそを掻きながら、トボトボ一人で歩き始めた。
少しして龍ちゃんが言った事を思い出す。
そうだった。
龍ちゃんとはぐれたら、はいでん。はいでんに行くんだ。
確かに龍ちゃんはそう言った。
拝殿に行ったら絶対に動くなって。
わたしは拝殿に向かって歩き始める。
急いで行きたいけど人がいっぱいでなかなか前に進めなくて、それでも何とか拝殿に着いた。
参拝の人たちが次々に賽銭箱にお金を投げ込んで、大きな鈴をガラガラと鳴らす。
わたしは拝殿の近くの階段に座って龍ちゃんを待つ。
最初のコメントを投稿しよう!