プロローグ すべての始まり

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 いつの間にかつないでいた手がなくなっていて、自分一人だけの手になっていて。  「りゅうちゃーん。りゅうちゃーん。どこ?」  わたしは何度も、何度も龍ちゃんを呼ぶ。  でも、周りを見回しても人混みばかりで、龍ちゃんは見つからない。  「りゅうちゃーん。りゅうちゃーん。ぐすっ、りゅ、ちゃん。どこ行ったの」  わたしは大きな声で龍ちゃんって呼んでみる。  でも声は人混みに飲み込まれて龍ちゃんはちっとも見当たらない。  わたしは半べそを掻きながら、トボトボ一人で歩き始めた。  少しして龍ちゃんが言った事を思い出す。  そうだった。  龍ちゃんとはぐれたら、はいでん。はいでんに行くんだ。  確かに龍ちゃんはそう言った。  拝殿に行ったら絶対に動くなって。  わたしは拝殿に向かって歩き始める。  急いで行きたいけど人がいっぱいでなかなか前に進めなくて、それでも何とか拝殿に着いた。  参拝の人たちが次々に賽銭箱にお金を投げ込んで、大きな鈴をガラガラと鳴らす。    わたしは拝殿の近くの階段に座って龍ちゃんを待つ。
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