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その前をお父さんやお母さんと手をつないだ子が通り過ぎる。
どの子も、綿あめとか、ヨーヨーとか、イカ焼きなんかを持ってて楽しそうな声を上げている。
わたしは、心細くて、心細くて、手のひらをぎゅうっと握りしめる。
龍ちゃん、言ったのに。ここで待ってろって。
どれくらい経ったのか、まだ龍ちゃんの姿は見えない。
わたしはとうとうしびれを切らして、首から下げたがま口の財布から100円玉を取り出す。
それを握りしめると、賽銭箱の前に立った。
100円玉を賽銭箱に投げ入れると、目の前にぶら下がった大きな縄をつかんだ。
思いっきり体を揺らして大きな鈴を鳴らす。
龍ちゃん、わたしはここだよ。龍ちゃんと約束したはいでんの前にいるよ。って心の中でつぶやいた。
そして目を閉じてもう一回龍ちゃんが早く見つけてくれるようにお祈りをした。
「糸、何やってんだよ。どれだけ探したと思ってるんだ。あんなに手を離すなって言ったのに…‥」
わたしはその声に振り返った。
「りゅうちゃん?」
「良かった。俺もうどうしようかって」
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