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「なっ! ち、違っ!」
「ん? おかしいな。さっきは反応しなかったはず……機械の故障か?」
慌てるアイサと、どこまでも鈍感な魔王。「違いますよ」と手下が言う。
「故障ではありません。さっきまでは確かに、アイサさんに好きな人はいなかった。でも今はいるんです。この意味が分かりますか? 魔王様」
「な、何を勝手な……!」
アイサが否定するより先に、魔王の顔がボンっと音が聞こえそうなほど赤く染まった。チラチラと遠慮がちにアイサを見やるその視線には、「マジで!? 両想い!?」的な期待が見え隠れしている。
やめろ。そんな目で見るな。
「じゃあ次俺! 質問⑨! その好きな人は魔王サイドの人ですか!」
別の手下が嬉々として言った。
「だから違うって! そもそも好きな人など……!」
ビィーッ!ビィーッ!と嘘発見器は容赦無く、アイサの心を暴いてゆく。
「あーもうっ! お前らも嘘発見器も、後で全部ぶった斬ってやる!」
「ビィーッ!」
「ふふ。アイサさんは優しいですね」
「うるさい! お前なんかに褒められても嬉しくない! 殺す! お前ら全員ズタズタに切り裂いて、ミンチにして食ってやる! 断末魔を肴に、その薄汚ねぇ血を啜ってやる!」
「ビィーッビッ、ビィービビビィーヴイィー!」
こ、こんなの新手の拷問だ! 情報を吐いても楽になれない分、むしろ余計にタチが悪い。
「質問⑩」と手下が言う。やめろ、これ以上私の心を丸裸にしないでくれ!
女の祈りも虚しく、断頭台に刃は落とされた。
「アイサさんの好きな人は、魔王様ですか?」
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