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「……」
最終手段。せめてもの抵抗としてアイサが選んだのは沈黙。もはや答えを言っているようなものだが、ハッキリと口にしてこの場で恥をかくよりはマシだ。
「教えてくれアイサ。お前は、俺が好きなのか?」
「……」
「良いのか? 答えない場合どうなるか分かっているなと、先に忠告したはずだが」
「……」
「答えないと、ちゅ、ちゅーするぞ……!」
「ブハッ」
なんだそれ、可愛すぎか! 今の私にそんなものが罰になるとでも思っているのか魔王!
「……」
「よよ良いのか? ちゅーされるんだぞ?」
「きょ、脅迫には屈しないっ!」
「そうか。ならち、ちゅーするしかないな! そういう約束だし」
「そ、そうだな! これは罰なのだから、ちゅーされても文句は言えないな。うん」
「そういうのいいからさっさとしろー! そらっ、キース! キース! キース!」
手下たちが囃し立てる中アイサと魔王は見つめ合う。そして、初めてキスする中学生のように(実際初めてなのだが)互いに唇をちゅーと尖らせた、その時だった。
正面の壁にばつ印の亀裂が入り、暗い部屋に細い光が差し込む。
直後。壁を粉々に破壊し乗り込んできたのは、見知った顔の勇者一行だった。
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