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「ほう。いい眺めだな、勇者の仲間の女よ」
部屋の入り口から降ってきた声に、女は弾かれたように顔を上げた。そこには魔王が立っていた。魔王の姿は遠くからしか見たことないが、大きく禍々しい2本の角は見間違えようがない。
魔王に続いて手下も数人入室してくる。全員上級魔物であることから、おそらく側近連中なのだろうと予測する。
魔王は焦らすようにゆっくりと歩き、床に横たわる女の顔の前で立ち止まった。女は意を決し、頭上の魔王に向かって吠える。
「くっ、殺せ!」
女の懇願に魔王は薄ら笑みを浮かべた。
「潔いことだ。だがそうはいかん。お前の身体に、たっぷりと聞きたいことがあるのでな」
ぐへへへ、と手下たちが笑った。
……やはりそういう目的か。分かってはいたが、いざ聞かされると足元から絶望が這い寄ってくるような心地がした。
無理もない。女にはこれから、死んだ方がマシというような屈辱と羞恥が待っているのだから。
「手下よ、準備を」
魔王の号令で女は部屋の隅にあるカビ臭い椅子に座らされた。さらに手下が持ってきた箱型の小さな機械。そこから伸びた大量のコードが、布製のバンドで彼女の身体中へと繋がれる。
恐怖のあまり「や、やめろ! 何だこれは!」と叫んだ女に魔王は「嘘発見器だ」と落ち着いた声で答えた。
「……嘘発見器、だと?」
「そうだ。この俺が直々にいくつかの質問を用意した。今から手下が読み上げるから、お前は必ず『はい』か『いいえ』で答えろ」
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