嘘発見器〜丸裸にされた女剣士の逆襲〜

7/12
29人が本棚に入れています
本棚に追加
/12ページ
「おい女。ど、どうだ? まだ臭いか?」  いつのまにか五本指ソックスを装着した魔王が、恐る恐るといった様子で尋ねてくる。 「別に……最初から、臭くなかったけど」 「そ、そうか。時に、この尋問が終わったらおにぎりを握ろうと思うのだが」 「あぁ、アクアパッツァは無理だったんだな」 「うるさい……それで、その、お前も一緒に食べるか?」 「……毒でも盛るつもり?」 「そんなわけないだろ! お前は俺の大切な、おっ……お客さん、なんだから」 「そ、そう。なら、食べてあげてもいいけど」  なにこれ、顔あっつ。  女は手で顔をパタパタと扇ぐ。初めて覚える感情に、完全に浮き足立っている。  魔王もまた女と同じように、真っ赤な上にニヤケを抑えきれない顔を必死で繕っている。そんなだらしのない仕草でさえ、なぜか女は目を離せない。  違う違う違う! そんなことあるわけっ……! 「ごほんっ! あの、そろそろ質問の続きをしても?」  痺れを切らした手下の咳払いで、女は魔王と二人の世界から連れ戻された。もどかしさと悔しさの狭間で心が迷子になる。 「あ、あぁ。質問を続けろ……続けてください」  兎にも角にも、再び尋問は再開されるようだ。 「質問⑦。子魔物は何人欲しいですか?」 「コマモノ?」 「人間で言うところの、子供というやつだな」 「なっ! そ、それだとっ……まるで、私が魔物と子を成すみたいな……」 「いや! ふ、深い意味は無いのだ! 別に、こちらサイドにお前と子を成したい者がいるとか……」 「アイサだ」 「え?」 「お前じゃなくて、アイサだ」  私は一体何をしているのだろう。魔物に、それもその王に、自ら名を名乗り呼んでもらおうなどと……。  アイサは自分自身に呆れ果てる。それでも胸の奥で暴れ狂う感情の波はもう、抑えることなどできそうになかった。
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!