片手に夢、そしてもう片方の手には電卓を持つ人々

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諦めない事を良しとし乍ら 「いい加減諦めてよ」と人の肩を叩く 「どうせ大した才能無いんだから」 「変に頑張らないでとっとと諦めてくれよ」と 「諦めなければ夢は叶う」 「諦めずに続ける事が大事」 それは成功者だから言える事 成功者にだけ浴びせられる賛美の言葉 人は皆 売れるものが好きで 金を集めてくれる才能が大好きなバイヤーなのに 自分は金儲けではなく夢を売っているのだと嘯く 金にならない人間の肩を叩いて 夢を剥ぎ取っているくせに この世界ではそれが当たり前と 容赦なく人を廃棄するくせに 金よりも夢や希望? 愛? そんな戯言に踊らされて 自分を持たない愚かな者達は 見えない作り物の夢に金を注ぎ込む 万人がいいと言うものを まるで伝言ゲームのように隣人に言い広めてゆく そしてほんの一時もてはやされても 売れなくなったものは途端に忘れ去られてゆく 一体 本当にいいものは何処にあるのか 才能の有無など誰に決められるのか 時が経っても変わらず称賛される才能など ほんの僅かなのに この世は常に無常(無情)なのに 歴史に残る偉人や芸術家でさえ記憶の引き出しに仕舞い込まれて 時折り誰かに気紛れに引き出される以外は 埃に埋もれてしまうのに そうして人々は今日も 諦めなかった才能を褒め称える 金にならない才能は足蹴にして 踏みにじって 諦めろと肩を叩き乍ら諦めない事を賛美する 片手に電卓を 握り締め乍ら 今日も明日も 嘘で固めた見えない夢を語り続ける (2020年3月13日作の詩) <無断転載・複写等禁止>
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