995人が本棚に入れています
本棚に追加
/257ページ
◆たかが恋。されど恋
「……はぁ」
背中を曲げてコタツにうずくまり、溜め息をつく。
ハロウィンから一週間が経ち、あの夜の出来事がいくらか遠く感じるようになった。
と同時に冷静に分析する気持ちの余裕も生まれてきた。
『物欲しそうな顔をして、あんなところにいたら、こうなるんだぞ』
入れ墨なんてあって、ものすごく怖かったけれど、彼は私を叱りたかっただけなのかも?
やっぱり優しい人だったのかな。
しようと思えばあのまま私をレイプできただろうに、彼はしなかった。もちろん胸は触られたし、あれでも十分に暴力だと思う、
でも彼が言った通り、私は物欲しそうな顔をしていたろうし、一方的に彼を責められない。
あのとき私は号泣して叫んだ。
覚悟はしてきたつもりだったけれど、私は世間知らずでやっぱり甘かったのだ。あんなふうに男の人が豹変するなんて夢にも思わなかった。
しかもよりによって極道だなんて。
優しそうに見えたから、後悔しないつもりで……。私は、バカだ。
目をつむって体をよじりながら涙を流していると、ふいに押さえられていた手首が自由になった。
最初のコメントを投稿しよう!