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◆プロローグ
一生に一度くらい冒険をしてみようと思った。
どうせなら紳士がいい。
遊び慣れていて、最高の一夜をくれる大人の男性が。
「猫耳彼女、かわいいねー、一緒に写真撮ろうよ」
「ごめんなさい、急いでるの」
ゾンビ、アニメのキャラクター、バニーガール。仮装した人々とそれを見る野次馬でひしめき合うメイン通りを抜け、私が向かうのは、とある高級ホテルのバー。
今夜のために何度も練習したメイク。目尻で跳ね上がるアイラインにフサフサのつけまつげ。ストレートボブカットのウイッグに、赤茶のカラコン。猫耳のカチューシャ。片足が根元まで露わになっているスカートから覗く紅いレースのガーターリング。衣装も含めて完璧なはず。
コスプレのテーマは小悪魔な黒猫だ。
発情期を迎えていて、ワンナイトラブの素敵な相手を捜している。
エレベーターに乗ると、後ろから血だらけのナースや天狗が入ってきた。
今日はハロウィン。
心に潜む背徳の熱が、鎌首をもたげて非日常の夜に酔う。
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