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「まぁ、そう言わず。いれますよぉ」
って、なにやってるんだろう、私。
帰ればいいのに。専務がいいよって言うんだから。
専務はウォーキングクローゼットに向かい、私はといえば、そそくさとキッチンに戻り、コーヒーをセットしはじめた。
耳を澄ますと、バスルームから水音が聞こえる。
どうやらシャワーを浴びているらしい。
コーヒーはどうしよう、出てくるのを待ったほうがいいの?
それともコーヒーを落として帰ったほうがいいのかなとアタフタしているうちに、バスローブを着た龍崎専務がリビングに来た。
少しはだけた襟から割れた腹筋が見えて、目が泳いでしまう。
ソファーに腰を下ろし、新聞を広げる専務を見ていると、居ても立っても居られない気持ちになってくる。
ホテルで会ったこと、どうしてなにも言わないの?
まったく感心がないのだろうか? 私が男の人とふたりでいたというのに?
「どうぞ」
「サンキュー」
顔を上げた龍崎専務はさっそくカップに手を伸ばす。
声色も仕草もいつもの調子だ。
「ご一緒していた方たちと打ち合わせだったんですか?」
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