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ツヅラヌ カミノ ハナシ
昔々、人の国と神様の国がありました。人は神様を遠くから敬い、神様は人を遠くから見守る不可侵の存在でした。
そんな神様の国に年老いた神様がいました。その神様に二人の子供が産まれました。双子の子供でした。年老いた神様には子供が一人もいなかったので、それはそれは喜びました。
年老いた神様の仕事は、神様の国を維持することでした。穏やかで平和な国の安定を守っていたのです。そして、年老いた神様はそのために大きな力を使い続けていました。しかし、年老いた神様は、その大きな力が時を重ねるごとに小さくなっていくことを感じていました。年老いた神様の力を助けてくれる、そんな存在を待っていたのです。
年老いた神様は双子に神様の仕事を手伝うことができるように、惜しみ無い愛と限りない力と途方もない知識を与えました。時に厳しく、時に優しく。
そう、全ては善であると年老いた神様は思っていたのです。
双子は時を経るごとに、髪の毛の色がそれぞれ徐々に変わっていきました。一人は黒に。一人は白に。それは双子の心のありようもでした。
年老いた神様に叱られる度、一人は憎しみを。一人は慈しみを。その心の底に溜めていきました。しかしその心の底に年老いた神様には気づくことができませんでした。
そうして双子の髪の毛が真黒と真白に染まった時、悲劇は起きたのです。
力を失いかけた年老いた神様は、いとも簡単にその命を奪われました。でも双子がその力を受け継いでいたので、世界を維持するのに問題はありませんでした。
他の神々が不満と不信を抱くと、次々とその命は奪われました。双子の力は他の神々の力を補っても有り余るほどで、世界は何事もないようにその存在を維持していました。
神様の国に神といわれていた存在は全て失われ、代わりに双子は新たに神となりました。双子だけの神様の国です。
やがて、神様の国には静寂が訪れました。穏やかで、暖かく、明るい日差しに満ち、誰の声もしない神様の国。何もかもを消し去るような長い時のなかで人の国は神様の存在を忘れ、双子の神様もまたその名を失おうとしていました。
その双子の神様の名は 。
忘れられた神様の、遥か遠い昔のお話。
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