旅立ち

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旅立ち

「そんじぁまあ。改めて、オーレン・フォードだ。まぁひとつ、これからヨロシク頼むぜぇ。」 王城を出てすぐのだだっ広い広場。王城を背に、まずオーレンが口を開いた。 「そうね。サラ・エルゴールよ。よろしく。」幼さの残る金髪の少女が続く。 「エルライン・フォレストロード・マヤナ・エーミル。 エルラで構いませんよ。これから宜しゅう。」 エルラも続くと三人はハルに視線を向けた。 「あ、いや〜。ハルです。何かすみません。僕なんかのために、なるべくお邪魔にならない様に頑張ります。」 注目される事が苦手なのでいつも以上に頼りない挨拶になってしまった。 「それにしても珍しいわねぇー。あなたの瞳、のねぇ。初めて見たわ。髪も真っ黒だし、この国の生れじゃないのかしら。」サラが下から覗き込んできた。 突然の接近に、驚いてしまったのもあるが、上手く返す事が出来なかった。 オーレンとエルラは共に、サラを見て意味不可視気な表情をしている。 口を開いたのは、エルラだった。 「【終焉の終わり】、彼の存在も瞳はそうよ。」 若干の間があったが、サラはすぐに理解したみたいだった。 「そっ。別に気にする事ないわ、瞳の色なんて。オーレンみたいに、死んだ魚の目よりはよっぽどマシだわ。」 「なっ。」 完全にとばっちりを受けたオーレンだった。 「はい。その通りです。」 「なっ!ハルまで!」 オーレンが反応するが、僕はすぐに気付き訂正する。 「い、いや。オーレンさんの事じゃありませんよっ。エルラさんの言っていた件です。・・・・・【終焉の終わり】その影響で間違いありませんよ。物心つく頃にはもうこんなでしたから。でも髪の色は生まれ付きだそうです。」 「せやねぇ。黒髪もそうおりませんからなぁ。」 独特の口調でエルラが言う。 「ま、まあ。僕の話は一旦おいて、これからついて話ましょうよ。」 「それもそうだな。他人の私情に踏み込むのは、もうちっと仲良くなってからだな。」とオーレンは大人な笑みを浮べた。 ※※※※※※※ 僕たちはこれから長い旅になるため、最後に家族や仲間に別れの挨拶や、旅に必要なアイテムなどの最終調達をする時間として一度解散する事にした。王国から旅の資金として充分過ぎる路銀をもらっていたし。 「そんじゃ、三時間後に、王都の東門に集合で。」 てっきり北から時計回りに浄化の塔を廻るものだと 思っていたが季節柄、北の国は今冬期の真っ只中らしくとても駆け出しのパーティで向かうには危険過ぎるとのオーレンの判断だった。 よって、僕たちが最初に向かう浄化の塔は、東の国コートポリアに決定したのだ。 皆解散し、一人になった僕は未だ王城前の広場に座り込んでいた。 こっそりもう一度シェルナールさんに会いに行こうとも考えたが、喜んでくれるだろうがそれ以上にきっと怒られてしまうだろうと諦めた。 あときっと、次は涙を我慢できる自信が無かった。 「三時間かぁ。特にする事も無いなぁ。」 だいぶ早いが東門に向かう事にした僕は立ち上がる。 ガシャッ。ガシャッ。 路銀として支給された、金貨100枚が重い。 「金貨100枚なんて、持っているだけで怖いよぉ。」 今回、王国から支給された旅の資金は一人あたり金貨100枚。四人なので、計400枚。 「ひえっ。立派なお屋敷が建っちゃうよ。」 大金を持っている事を、周りに悟られない様になるべく自然を心掛けて歩いた。 ただ、こうして王都の街中を歩くのも久しぶりで何だか新鮮に感じた。城下町には露店が立ち並び活気に満ちている。現国王は、稀に見るカリスマ性を持っているらしく他国でも評判も良く国民にも慕われている。 こんな僕が、今の様な待遇を受けれたのも国王の意思によるものだとシャルナールさんが教えてくれた。 露店には、本当に様々なモノが売られていた。 甘めの紅茶にミルクを入れ何やら黒い粒が入った甘味が、隣国では流行っているらしい。 あと、魔法石なんかも売られていて、たまたま目に入った露店はどうやら装飾品を扱うお店らしく。 「綺麗だなぁ。ひっ。・・き・・金貨100枚。」 翡翠色の魔法石をあしらったネックレスが店頭のガラスケースに飾られていた。 「こんなの買えるのは、王族か貴族くらいしか居ないんじゃ・・・・。」なんて小声でボヤいてみたが 同時に、今なら自分も買える事に気付き鳥肌が立った。 「急いで東門に行こう。」 僕は最低限の携帯食と数本のポーションを買うと足早に露店をすり抜け東門に向かった。 王都東門は、隣国や城外の町や村からの行商人の玄関口になっているらしく遠目でも終わりが見えない程の列が出来ていた。 「凄いなぁ。今日中に皆んな入れるのかなぁ。」 東門関所を通過した何組かの行商人とすれ違ったが、獣人やドワーフなど人間以外の種族の姿も見れた。きっとこれから、露店を出すために役所へ手続きに向かうんだろう。皆一様に同じ方向へと荷馬車を引いて歩いて行った。 「ここら辺で、良いかな、、。」 東門の人集りから少し離れた壁際に、ちょうど良い場所を見つけたので、そこで集合時間まで待つ事にした。 「まだ、二時間くらいあるかなぁ。」 人気の少ない隅っこで、ぼんやりと空を眺めて時間を潰す。 「ここ、落ち着くなぁ。」
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