プロローグ 

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プロローグ 

オーランド王国。王城、謁見の間へ続く渡り廊下。 「終焉の終わり」 「なによ、そのみたいな名前」 白いブラウスに膝下までの黒いスカート。美しい金色の髪を左右に揺らしながら少女が小馬鹿にするかの様にボヤく。 「サラ、あなた本気で言ってるん?」 長身の女性は、白いローブを羽織りエメラルド色の長い髪をなびかせ少女の歩幅に黙って合わせる。 手には、魔法石をあしらった杖を持ち左右斜めに長く伸びた耳は人間のソレとは違い美しさをより際立たせる。 「そのエルフの言う通りだぜ。嬢ちゃん、【終焉の終わり】って言ったら、そこら辺の子供でも皆んな知ってる常識たぜ?いや昔話か。」 整った顔付きで、軽い風体。小綺麗な盗賊衣装に身を包む男が言う。 「そのエルフとは、けったいな言い方やなぁ。エルライン・フォレストロード・マヤナ・エーミルと言いますぅ。」語尾の発音が上がる独特のイントネーションでエルフは言った。 「長いなぁ。俺は、オーレンだ。よろしく、エルライン・フォ、、フォー、レストロー、、、、ミルちゃん。」 「そっ。エルラで良いわ、よろしくお願いしますぅ。」 「で。そのって何なんなのよ!」 自己紹介の流れかと思いきや、まだ幼さを残す少女は見た目とは裏腹に強い口調で二人を見上げる。 「おいおい。本当に知らないのか。」 オーレンは少し驚いた表情になるが、すぐに「気になるかい?」と笑みを浮かべる。 「は?別に無理に聞こうとは思わないわよっ。」 オーレンの態度が気に触ってしまったのか、サラは少し拗た様に、プイッと正面を向き歩き出した。 「まぁ、まだ少し時間に余裕はあるしな、、、、。それじぁ。好奇心旺盛なサラお嬢様に少しばかし昔話を披露させてもらおうか。」 したり顔でオーレンは、笑みを浮かべる。 「別に、良いって言ってるじゃないっ。」 サラは、振り返る事無く金色の髪を左右に揺らす。 「まぁ、サラ。せっかくやし聞いておきましょう。これから共に旅をする事になるんやから。ね。」 諭すように優しくエルラが言うと、若干の間を開けてからサラは振り返り黙ってオーレンを見上げた。 オーレンは、「素直じゃないねぇ。」とボソリと小声で呟くと、「何か言った?」とサラが睨みを利かす。 「それじゃあ、仕切り直してご清聴願おうか。これは誰でも知ってる昔の話、ずっとずっと昔からある今に続く話だ・・・・・・・・・。」 オーレンは、子供に読み聞かせる様な口調で世界や種族に共通して伝わる伝説を語る。 ※※※※※※※※ 【終焉の終わり】 それは、現象では無くただの言葉でも無い。 昔、世界に突如として現れたの名前。 それは、1000年前の【人魔大戦】にまで遡る。 ヒューマン、エルフに獣人、ドワーフのヒト属 と 悪魔、魔獣やゴブリン、ドラゴンなどの魔属。 ヒトの王と、魔の王とで種族を別けた争いが起こった。それは、勝者が世界を支配し敗者は虐げられる。 血で血を洗う様な戦いは何年も続き、町や村が無くなりたくさんの命が失われた。絶滅の危機に瀕する種族もあった程だ。 争いが憎しみを生み、憎しみがまた争いの火を強くする。 もう、何が目的で殺しあっているか分からなくなる様な状態が続いた。 その憎しみや悲しみ、終わりの見えない苦しみが最高潮に達した時、突如にしては現れた。 【終焉の終わり】 突如現れた、最強最悪の厄災にヒト属も魔族も圧倒された。新たな脅威の発生でお互いに疲弊し、この世の終わりかと思えた。 このままでは、両種族とも甚大な被害を負ってしまう気付いた両種族の王は争いを辞め、共に手を結び【終焉の終わり】に立ち向う選択をした。 そして、多くの犠牲を出しながらも【終焉の終わり】に打ち勝つ。それと同時に種族間の大戦も終わり迎えた。 もうお互いに争いを続ける気力も力も残ってはいなかった。 「とは、この世の終焉と思えた【人魔大戦】をも終わらせた、最悪の厄災そのモノを現した俗称の様なモノさ。これが、種族問わずに受け継がれる昔話って訳だ。」と、オーレンは満足そうに話を終えた。 サラは本当に初めて聞いた様で、終始黙ってオーレンの話を聞いていた。 「お嬢ちゃん、さすがに感想の一つでも無いと、ちと寂しいな」 「ふーん。で、結局その【終焉の終わり】って何なのよ?」 苦笑いをするオーレンに対してサラは、真剣な眼差しで疑問をぶつける。 「あー。それはだなぁ。」 「オーレンはん、ここはウチが。」 「【終焉の終わり】は、全ての種族の怒りや悲しみ・嘆きなどの負のエネルギーの集合体と言われてるんよ。件の、人魔大戦により発生した皆の負の感情が、集積し折り重なり果ては混ざり合い形を成した化身という所やねぇ。」 「負の感情・・・・。ならどうしてまたその【終焉の終わり】が存在しているのよ!大戦なんてとっくに終わってるじゃないっ。それにもう退治されたんでしょっ?」 「そうやねぇ。サラちゃんの言う通りやけどね。一度生まれてしまった【終焉の終わり】は無くなったりせぇへんのよ。私達が生きている限り、負の感情は生れ彷徨い、この世界のどこかでまた蓄積されていくんよ。その負のエネルギーが臨界点に達する時、ソレは依代(よりしろ)を求めると言われてるんよ。」 「依代・・・・・。それじゃあ、、」 「おおっと残念だけどそろそろ時間だぞ。お嬢ちゃん。」 「え、あ、もうっ!」 納得のいっていないサラをオーレンが時間だと静止させる。 ゆっくりの歩幅で歩いて居たはずだったが気付けば王宮内の【謁見の間】の大扉の前まで来ていた。 「この先に、王様たちとその【終焉の終わり】の依代が居るって事?」 「そういう事だ。」 「そうやね。」 プォーーーーーン。 大きな笛の音が大扉の向こう側から鳴らされる。 プォーーーーーン。 示し合わせたかの様にもう一度、今度は三人が居る扉前の衛兵が笛が鳴らした。 すると。 ギィ。 鈍い音と共に大扉がゆっくりと開かれた。
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