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文芸部の部室は北校舎の地下二階にある。そこは建築上の関係で渡り廊下を通らないとたどり着けない。その渡り廊下も職員室と校長室を両側に置いた場所に設置されてあるため、誰も進んで通りたがらない。難なく通れるとすれば、自分のような「ザ・優等生」だけだろう。
綾本理衣子は自分が教師に気に入られていることを知っている。学校の成績は勉学と体育実技ともに自信があるし、おまけに自分の顔が「上」であることも自覚している、生粋の「優等生」だ。男子たちの間では「高嶺の花」と噂されている現実も、本人をより愉快にさせた。
そんな調子の理衣子だから、まさか職員室の目の前を通った時に学年主任から声をかけられるとは思わなかった。厳しい教育指導で有名な学年主任が理衣子は嫌いではなかったが、なにぶん大人と子どもなので、理衣子はちょっと身構える。
「何でしょうか、郡上先生」
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