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「あのとき助けていただいたしっぽです」
そういうしっぽは黒ボブの前髪ぱっつん、色白メガネでファッションはレトロでカラフルな色柄ワンピースの下北沢系って、よりにもよって俺の好みドンピシャの女子に化けていた。
なんでだろう。洗濯物を見ただけで女の子の好みまでわかるものなのか。
俺自身は全然センスなくて、独自のオシャレ魂が爆発する下北沢系どころか、タンスの中は白黒紺グレーだらけ。上下ユニクロの無難な格好しかしていないのに。
「助けてはないと思うんだけど」
やっとのことでそれだけ絞り出した俺にしっぽは「ふふ」と笑う。
「冗談だよぉ。驚いた?」
すごい。口調まで俺の好みに寄せてきてる。笑い方も、さっきまでフフゥだったのに。
しっぽ扮する女の子は、鼻にかかった舌足らずな話し方も、ボブヘアに載せた黄緑のベレー帽も、銀縁の丸メガネから覗くコケティッシュな上目遣いも、どうしようもなく俺好みで、ていうか平たく言えばエマにそっくりだった。
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