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「椿」
名前を呼ばれたので、ゆっくり顔を上げると、そっと唇を奪われた。触れるだけのキス。終がなんだかちょっと困ったような照れたような微妙な表情を浮かべているから、私もつられて照れてしまう。
「……キス、したかったのかなと思って」
「うん」
ふれたいとかつながりたいとか、そう思ったのは終の気持ちが欲しかったからで、快楽だけ身体に叩き込まれても、なんだかむなしくて。
もう一度、私からキスをする。前回みたいに急に進んでいくんじゃなくて、こういうのがよかったんだ。なんだか安心する。
「笑顔んなった」
やっぱり終は困ったような顔をしている。
「こないだは、不安そうで、それはそれでそそったし、もっと泣かせてやりてえなって思ったけど」
物騒な。
そっと頬をなでられ、思わず眉が下がる。
「やっぱり椿の笑顔、いいな」
「今日はゆっくり優しくして。私はイカなくたっていいから」
「……わかった」
部屋着をゆっくり脱がされ、下着だけにされた。前回、終は服を着たまま私にいろいろしてきたけど、今回はそのまま自分の服も脱いだ。私だけ翻弄されているのが、なんだか不安だったから、それだけで安心する。
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