終わらない夏休み

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「明日から学校でしょう、早く起きなさい」  朝になり、1階から私を呼ぶママの声で目が覚めた。  エアコンはいつの間にか停止しており閉め切った部屋の温度は高く、今度は汗でぐっしょりとパジャマが濡れていた。  私はふらふらしながらも着替え、ダイニングのテーブルに用意された朝食の前に座る。 「はい、お味噌汁」とママに出された物は、ニラの味噌汁。  フワッとニラの香りがする。  しかし食べてみると、ニラに混じって独特な苦味のある葉っぱが入っている気がした。  夏休みの間中、隙を見つけてはスマホでネットサーフィンをしていた。  その際、厚生労働省の有毒植物の注意喚起のサイトを見た覚えがあった。 「ねぇ、ママ。これって水仙の葉っぱ入ってない?」  私は冗談のつもりで聞いてみた。  ーーーガシャン、とママがキッチンのシンクで洗い中の鍋を落とす。 「な、何馬鹿な事言っているの。そんな訳ないでしょう。水仙なんてどこにあるのよ。サッサと食べてしまいなさい」  そう早口で言うママの声は上擦り、こちらを見ようとしない。  え?まさか、本当に!? 「嘘…嘘でしょ!?私でも知っているよ!水仙の葉っぱは毒だって!」 「違うって言っているでしょう!水仙なんてどこに植わっているのよ!」  確かにうちの庭に水仙は、春にはあったが今は無い。 「だったらママがこのお味噌汁食べてみてよ!」  私はママにお椀を向ける。 「……っ、そ、そんな事…」  やっとこちらを見たママは青ざめ、明らかに動揺していた。 「どうしたの?食べられないの?」  私の心臓は高鳴る。
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