終わらない夏休み

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「……ちょっとお腹を壊す程度しか入れていないわよ」  ママが視線を逸らして呟いた。 「まさか……エアコンの設定温度もママが…!?どうしてそんな事…!」 「どうした、朝から騒いで」と、出勤前のパパがトイレから戻ってきた。 「パパ、聞いて!ママが私を病気にしようと……」  病気?  自分の発言でふと気がついた。 「もしかしてママ、去年も一昨年も…ずーっとそうしていたの?」  ママは小さく頷いた。 「だって……あなたの夏休みが終わったら、また昼間ひとりぼっちになるんだもの。寂しくて……。あなたが病気になれば、出かけずずっと一緒だもの。あと数日だけでも夏休みを延長して欲しかったの」  聞けば水仙の葉は毎年この日のために少量を冷凍保存していたと。  その上、エアコンのタイマー予約を駆使して体調を崩させようとしていたらしい。私に睡眠薬を少量服用させ、途中目覚めないようにもしていたと。  必ずしも主婦は夏休みが早く終わって欲しいと思い、終わって欲しくないと思うのは学生や勤労者だけ、というわけでは無いようだ。  ーーーあなたのママは大丈夫?  (了)
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