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西村さんは、小さくため息をついてまたうつむいてしまった。
全く、あの人間たちは本当に空気が読めていない。あるいは、それを知っていながらさらに窮地へと追いやる悪魔だ。
私は西村さんが気になり、読んでいた本をパタンと閉じた。
「西村さん…大丈夫?お姉さんの話、聞いたよ」
「ああ、うん。大丈夫、大丈夫」
私も、西村さんが大丈夫でないことは十分理解している。
西村さんは大丈夫でないことをしきりに、そうすることが義務であるかのようにみんなに言っていた。それほど、今切羽詰まっているのだろう。
「あのさ、西村さん。西村さんもわかってると思うけど、あの人たちは西村さんのことちゃんと考えてくれてないよ。そんな人たちと一緒にいたら、西村さんも気分悪いと思うし、辛くなっちゃうと思うよ」
西村さんが、少し驚いたように顔を上げた。きっと、私も長崎さんのようなことを言ってくると思っていたのだろう。ちょっと偏見だなあと思いつつ、西村さんの反応を見る。
「うん…そうだよね。あの人たち…長崎さんは、副委員長だけどリーダーシップも人気もあるし、私なんか、って思ってたの。でも、委員長に選ばれた時は嬉しかった。だから、長崎さんに負けないように頑張る」
西村さんは、緩くウェーブしてふわりとした髪に似たような雰囲気で笑った。
私も「うん」と少しだけ笑った。
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