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 付き合うことになったけれど、私達二人の雰囲気やペースはあまり変わらないと私は思っていた。  でも、隼斗にそれは少し違うと言われた。 「俺にとってはさおりは最初から好きな人だったから。さおりの気持ちが追い付くまでゆっくり待つよ」  私に甘いと思っていた隼斗は、付き合いだしたら更に激甘になった。  話し掛けようとして、背の高い隼斗を見上げると、それだけで隼斗は目を細めて優しい笑顔になる。その表情の甘さに、私が赤面してしまうくらいだった。大きな手に触れられるだけでほっとしたし、抱き締められれば胸が一杯になった。   隼斗と体を重ねたのは、次の桜の季節だった。1年もの間、私の気持ちが追いつくのを待ってくれたみたいだ。  隼斗はあの人と違うと分かっていても、緊張と恐怖でがちがちになっていた私に、何も聞かずただ優しく丁寧に触れてくれた。時間をかけて体を繋げてくれたとき、自然に涙が溢れた。  痛みや悲しみじゃない。  愛して、愛されていることを確かめられた喜びが溢れたんだと思う。  
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