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浩太朗はトイレトレーニング真っ只中。でも、いろいろと大変だから平日の夜は紙オムツをはかせて寝ていた。
ある日、お風呂上がりに準備を忘れ、取り敢えずトレーニングパンツをはかせていたのに、うっかりそのまま寝かせてしまった。
くっついて眠る浩太朗の温かさが普段と違うと思ったら案の定、私のパジャマは濡れてしまった。幸い浩太朗と私のパジャマが濡れただけで、大きな被害がなかったことにほっとする。とりあえず汚れた服を脱がせ、浩太朗の体をきれいに拭いてから私はシャワーを浴びることにした。
慌てていたせいか私は隼斗の帰宅に気付かず、疲れていたせいか浴室に私がいたことに気付かない隼斗と、浴室の扉を開けたところで鉢合わせしてしまった。
思わず扉を閉めかけた私に、目を逸らしたままの隼斗が、バスタオルを手渡してくれた。
「・・・ごめん。気付かなくて」
顔を背けたまま、隼斗はすぐにドアを開けて脱衣所から出て行った。
たぶん、帰ってきて手を洗いたかったんだろう。
受け取ったタオルを顔に押し当てた。私だって恥ずかしかったけれど、あんなふうに顔を背けられるとは思わなかった。まじまじと見られたら嫌かもしれないけれど、私の知る隼斗なら違う反応をしたと思う。掛ける言葉も違っていたはず。
触れるどころか、視界に入れるのも嫌なのかな。
気持ちが落ち着くまで、時間をかけて肌の手入れをしてから戻った。
「浩太朗がおねしょしちゃって、シャワー浴びたの。空いたから使って?お湯、追い炊きしておいたからね」
「わかった。ありがとう」
既に着替えていた隼斗は、タブレットから視線をあげないままだ。
「冷蔵庫にご飯があるから。ごめん・・・私、先に休むね」
浩太朗と一緒に眠ってしまわないときは、隼斗の食事を温めながら少しでも話すようにしているけれど、今日はちょっと無理だと思った。
すぐには眠れなかったけれど、私が起きている間隼斗は寝室に入ってこなかった。
本当に、隼斗が私のことを避けているんだと分かって、ただただ悲しくて胸が苦しかった。
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