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 12月も半ば。土曜日に出勤となり、同期の女子社員3人でランチをすることになった。結婚しているけれど子供はいない亜矢、私より早く結婚、双子の出産・育児をしていて、3人目をおなかに宿している百合。  平日はお弁当を持ち寄っているけれど、滅多にない土曜出勤の日は息抜きもかねてランチタイムに集合するのがお決まりのルール。  デザートタイムに突入した頃。 「ねえ、さおり。あなたの後輩のなんて言ったっけ。若い子。」 「ああ、葛城君?」 「さおり、手を焼いてるでしょ?大丈夫?」 「彼は優秀なの。…仕事はきちんとしてるよ」 「私たちには隠せないよ。仕事はできるみたいだけど、さおりにちょっかい出そうとしてるでしょ?って言うよりもかなり本気なのが危ない感じだね。ご主人には話した?」 「…まだ、話してない。」 「何?旦那に言わないなんて、さおりらしくない。」 「・・・・・・。」  反射的に、無言で曖昧に笑ってごまかそうとしてしまった。二人は顔を見合わせている。 「もしかして、ご主人と、うまくいってないの?」 「うまくいってないというわけでもないけど、…最近何だか擦れ違いで。」 「えー?あの溺愛してる旦那さんとさおりが?」 「溺愛って、私そんな感じなんだ?」 「いやいや。違うから。旦那がさおりを溺愛してるって話」  確かに、浩太朗が生まれるまではそうだったかもしれない。  でも、今は違う。 「今はそんなこと…ないよ」  やけに深刻に、声が響いてしまった気がする。二人はまた目を合わせ、それぞれ心配そうに私に視線を移した。 「もしかして、レス?」 「何?レスって?」  周囲の人に聞こえない程度に声を潜めて、近況報告をしたうえでアドバイスを受けることになってしまった。  あけすけに何もかも話すわけにはいかない話題だと思っていたけど、勇気を出して人に話すことも大事なのだと感じた。
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