01

1/2
222人が本棚に入れています
本棚に追加
/54ページ

01

「さおりさん!おはようございます。」  にっこりほほ笑む隣の席の若者。 最近、何かにつけて絡んでくる彼の言動の裏に何かを感じる。  けれど、それを確かめるのも図々しいというか、自意識過剰のような気がして放置決定。  今もまた、ふと感じた視線にちらりと目をやると、隣の葛城君が慌ててパソコンの画面に目をやるのが見えた。  ああ。  これは、どうするのが正解なんだろうな。    育休明けで復帰した昨年、新採用で入社したのが葛城君だった。新卒の彼は優秀だけれど、人懐っこいタイプ。保育園の呼び出しで、穴を開けてしまうこともある私のフォローまでしてくれた。入社7年目の私としては、甘えるばかりでは立場がない。作業効率を考え、経験と築いてきた関係や信頼を元に必死に働いた一年目。漸く生活のぺースが掴めた今年は、葛城君とペアの仕事が増えた。   そう。それだけ。  私には大切な家族がいる。  それは、葛城君もわかっているし、そもそも私は揺らがない。
/54ページ

最初のコメントを投稿しよう!