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 就職先が同じ沿線だったこともあり、週末には近況報告やら何やらで一緒に食事に出かけることも多かった。 「さおりが元気だって画像付きで報告しないと、飯島咲世に怒られるからな」  前は咲世って呼んでた気がするのに、気付けば隼斗は咲世のことをフルネームで呼ぶようになっていた。なんだか力関係が分かるみたいで面白いなって思ってた。入学当初バレー部に入るつもりでいた私は、咲世と仲良くなった。でも、あの人とつきあい始めてからなんとなく足が遠のき、結局入部はせずじまいだった。ただ、咲世とは気が合い、ずっと仲の良い友人同士だ。一番の親友と言って良い。  兄と弟の間の私は、お姫様のようには育たず、三人兄弟の真ん中の男の子みたいに、逞しく育った。母の期待にだけは応えようと、髪を伸ばしかわいらしい服装もするけど中身は違う。気は強いし、負けず嫌いだと思う。大柄な兄と弟の間の私は、なぜか平均より小さな体つきだ。バネだけはあって、高校卒業まで続けていたバレー部では、ずっとセッターだった。  スーパーボールが小さい頃のあだ名だったと伝えたら、大学の友達はみんな大笑いしてた。私が自慢にしてたコレクションの多さじゃなくて、あの特性に似ているから名付けられたみたい。   「跳ねっ返りが予想できないもんな」  隼斗はそう言って、いつまでも笑いを引きずってた。なぜかそんなことを思い出した。  月4、5回のペースで会う機会を重ねて迎えた年の瀬。 「隼斗は、好きな人とか彼女とかいないの?こんなに私と会ってたら勘違いされたりしない?」  漸くさまざまな痛みから解放された頃、ふと気付いたように尋ねた。   そろそろクリスマスも近いから、念のために尋ねたつもりだった。私の顔を、穴が開くほど隼斗は見つめた。  私はどうやら異性に関して、相手を思いやる能力に欠けているようだ。  弄ぶつもりなど、さらさらない。むしろ男女の別などあまり気にせずにいる方だったかもしれない。訳がわからなくて、首を傾げて見つめ返す私を見て隼斗は小さく呟いた。 「…マジかよ」 「えっ?」 「彼女はいない。好きな人はいる。ずっと」 (そう言えば、1年の時からいつも近くにいたな。まさか?いやいや。それはあまりにも自意識過剰だ)  考えもしていなかった選択肢を思い浮かべて、思い切り首を横に振ってしまった。  
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