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『あなたは、誰? あたしのことを、知ってるの……?』
瑠奈が、自分の中に入り込んで来た「意識」に、そう語りかけると。
【うん、ずっと昔のことだけどね。君はまだ、6歳くらいだったかな……】
その「答え」に、瑠奈は確信を抱いた。
『あなたは、あの時のことを知ってるの? あたしの両親と妹が消えた時のことを、知ってるの……?』
「意識」は、少し沈黙したあと。やがてゆっくりと、その「真相」を語り始めた。
【僕たちはね。ここで自由を勝ち取ったあと、更なる「理想の地」を求めたんだ。それは僕たちの中で、いわゆる「異世界」のことを感じ取れる子が、語ってくれたことがきっかけだった。
この世界、いわゆる「現世」にはね。異世界と呼ばれている、「向こうの世界」に繋がる入口があるんだよ。それはいつも開いてるわけじゃなくて、色んな条件が整った時とか、あるいはほんの偶然から開いたりするんだけど。現世の空間に、ぽっかりと「裂け目」が出来るんだ。その裂け目から、異世界へと行くことが出来る。
その、異世界っていうところはね……なんて説明すればいいかな。現世とは違い、時間や空間に縛られることがないんだ。わかるかな? 時間に縛られることがないってことは、つまり「死を恐れることがない」ってことなんだよ。
死を恐れずに済むなら、現世にいる時のような、様々な欲望に捕らわれることもなくなる。人は死ぬのを恐れて、生きたいと思うあまりに、必要以上の欲望に捕らわれてしまうからね。だから異世界は、まさに「理想郷」と言える場所なんだよ。
時に縛られることがないゆえに、僕らはずっと「子供のまま」で、変な欲望に捕らわれたりせず、純粋なままで生きていられる。でも現世では、僕たちみたいな「力」を持った子供は、偏見や差別を受けることが多い。だから1人でも、そんな子供を「仲間」にして、救いたいと思ったんだ】
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