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【僕らはそのために、仲間が持っているテレパシー能力を拡大して、各地にいる「力のある子」を探している。そして、今から15年前に見つけたのが「君」だったんだ……】  そこで瑠奈にもようやく、「あの日」のわずかな記憶が蘇って来た。  ……そうだ、あの日あたしは見た、いえ、「感じた」んだ。家の庭にぽっかりと浮いた、「裂け目」みたいなものを……! 【異世界は空間に縛られることもないから、異世界を通じて色んなところに、時間をかけずに行き来出来る。だから、「君の家」にもすぐに行けたわけさ。だけど、そこで君の「危機回避能力」が発揮されたのは誤算だった。君は空間に出来た「裂け目」を感じて、「危機」を察知し。そこから逃れようとした。その結果……君を裂け目の中、異世界へと連れていくことは出来ずに。その反動で、君の「家族」が異世界へ来ることになってしまったんだ】    ……そうだったのね。両親と妹は、あたしの代わりに「消えた」のね……! 【だから僕らは、またそんなことが起きることのないよう、君を「誘う」ことは諦めたんだ。そして僕らは精神鍛錬と、自分たちの持つ「力」によって、裂け目を意図的に作り出すことも出来るし、異世界と現世を行き来したりも出来るけど。君の家族は「そうじゃない」からね。精神鍛錬が未熟な人や、「力」の無い人が無理に異世界を出ようとすると、全く「別の世界」へ飛ばされてしまう危険がある。例えば、俗に言う「地獄」みたいな世界へね……。だから申し訳ないけど、ご両親と妹さんはあの日からずっと、異世界で生き続けている。  でもご両親は、僕らの話にある程度納得してくれて。君が現世で「無事でいる」ことがわかってから、今は異世界にいる僕らの仲間全員の、「親代わり」になってくれてるよ。本当に感謝してる】  お父さんもお母さんも、そして妹も。その「異世界」ってところで生きてるんだ。どこかに「消えてなくなった」わけじゃないんだ……!  そう思って、少し「ほっとした」瑠奈だったが。そこでひとつの「疑問」が湧きあがってきた。それを、頭の中の「意識」に、問いかけずにはいられなかった。
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