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そして「意識」はしばらくののち、重い口を開いた。
【うん……それも、申し訳ないとは思ってる。でも、僕らが異世界へ行けるようになったのも、「ここ」が全ての始まりだから。ここで犠牲になった仲間たちへの思いが、今の僕らに繋がっている。だから僕たちの魂は、「ここ」とは切り離せない。そのためにも、ここが「知られてしまう」のは避けなけりゃならないんだ。
それから、酷い殺し方をしたのも。もし万が一、誰か生き残ったりしたら、生き延びたあとにも「あんな酷い死に方はしたくない、そのためには『あの場所で起きたこと』を、一生秘密にしなきゃ」って思ってもらえるようにと。そういう意図があるんだよ。君たちが最初に地下に降りて来た時に、焼却炉の前の空気を集めて、床に落とすことで「脅かして」みたんだけどね。君たちはそんなことじゃ、引き下がらないのがよくわかったし。
だからそれを実現するため、君の「危機回避能力」が発揮されないようにと、僕らは自分たちの「敵意」を消し、君の予知に対する「バリア」を張っていた。君がここで危険を予知することで、君が6歳の時に起きたような、「思いがけない事態」が起きるのを避けるためにもね。
そして、実際に「行動」を行なう僕らとは別に、「ただ、そこにいるだけ」の役目の子を用意して。君たちに対する「敵意」を持たせずに、ここに配置しておいた。君が危険を察知することなく、ものに触って記憶を読み取る人や、霊を見ることの出来る人が、「そこに、何かいる」ことだけは察知出来るようにね。でないと君たちは、ここで何かを見つけるまで、ここを探索し続けるだろうから。
それだけ、僕らはここを守りたい。僕らがようやく見つけ出した「理想郷」を、守りたいんだってことをわかってもらえれば……】
「意識」がそこまで言ったところで、瑠奈はようやく理解した。自分がずっと感じていた、「危機を察知しない違和感」の正体を。「敵意」を消すことによる、予知能力のバリア。敵意がないもの=危険と感じられないものからは、「危機」を察知することは出来ないのだから。
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