SCENE1 世界公園《ワールドパーク》上空

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 「他に何か、ご質問はありますか?」  超名士(セレブ)の通訳として任命され驚いたが、彼が世界中のスラム街を何とかしたいと考えていることを聞き納得した。今やヨコハマの世界公園(ワールドパーク)は最も混沌と混乱に支配されたスラム街として名が知られている。  「君は日本(ジャパン)の警察の中で、この世界公園(ワールドパーク)を担当する部署に所属していると聞いたが、具体的にはどんなことを?」  トムソンが質問をしたと同時に、機体は旋回しみなとみらい地区の前から海側へ向かった。もう一度世界公園(ワールドパーク)の上空を目指す。  「そうですねぇ。遊撃捜査班といって、まあ、担当するのは世界公園(ワールドパーク)を起点として発生する犯罪に関しての捜査全般、という事になっていますが……」  説明に困るマサヤ。世界公園(ワールドパーク)には複数の海外マフィアが支部を構えている。そして、それらを統括する協議会というものがあり、とりあえず悪徳の街なりの秩序を維持していた。警察と対立する組織ではあるが、時に――そして極秘に――協力し合うこともある。世界公園(ワールドパーク)内の規範に反する者は協議会が始末をつけるという不文律もあり、それと遊撃捜査班が動く事案との線引きもまた難しい。  「場合によってはどこかのマフィア組織との武力闘争ということもあるのかね?」  「あり得ないわけではないですが、現在は犯罪組織の側も派手な動きは控えていますから少なくなっています。もっとも、マフィアに属さない個別の犯罪者や、新たに発生するグループなどはお構いなしに暴れることもありますから、その際には制圧のために派手な争いも起こりますね」  「それらに対応するためには、よほど戦闘能力の高い警官達が必要なんだろうね」  「遊撃捜査班の刑事達は、みな一騎当千の強者です。それぞれ出自は違いますが、特殊な訓練も受けています」  ラズは元暗殺者だし、その相棒のダイゴは海外で傭兵として活動していた。他の刑事達も、元軍人やバウンティー・ハンター等で、優れた腕を持っている。
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