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「失礼ながら、君はそのようには見えないが……」
控えめではあるが、トムソンがマサヤを見て意外そうな顔をした。
「僕は通訳吏員として勤務していますので、荒っぽいことには加わりません。まあ、現場に出ることもあるので、危険な目には何度も合ってますが……」
苦笑するマサヤ。最初にラズやダイゴと関わった事件では、何度も死にかけた。今でも命があるのが不思議なくらいだ。
そこまで話していたとき、不意に機体がガクンと揺れた。そして、急な方向転換を行い再度みなとみらい方面へ向かう。
「ん? なんだ? どうして急に方向を変えたんだ、ジョイス?」
トムソンがヘッドセットのマイクを掴んで言った。ジョイスというのは彼の部下で、このミニヘリ型有人ドローンの開発責任者でもあるそうだ。彼が地上でしっかりと遠隔操作を行っているはずだが……。
『わ、わかりません。なぜか急にこちらのプログラムを無視し、操作も無効にされています』
焦る声が聞こえてきた。ジョイスにとっても予想外の事態となっているようだ。
「ならばこちらで指示を出す」
トムソンがコクピットと言える全面の操作パネルに向かった。いくつかのスイッチを押し、パネルをタップした後マイクに口を近づける。
「元のヘリポートに戻るんだ。今すぐ方向を変えろ」
しかし、機器は何の反応もしなかった。方向もそのままだ。
「どうなっているんだ?」
声を荒げるトムソン。
『考えられることは……』ジョイスの声が徐々に小さくなっていく。『ハッキング……。この遠隔操作システムが何者かによってハッキングされ、乗っ取られ……』
無線はそこで、ぷつりと切れた。
ハッキング? 乗っ取られた? じゃあ、どこへ向かって……。
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