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マサヤは視線を巡らせた。機体が向かう先には、ケバケバしいネオンが輝く一帯が見える。世界公園の中でも異彩を放っていた。
「あそこは、島なのか?」
トムソンもマサヤの視線を追い、向かう先を見つめた。
「あれは、昔は新港地区と呼ばれていた場所です。みなとみらいに属していましたが、今は逆に世界公園の一部、それもあの地域だけ運河に囲まれた島のようになっているので更に特殊化しています」
富裕層が集まるみなとみらい地区からは、現在運河に沿ってバリケードのような壁がたてられており、そこからの行き来は原則できなくなっている。
元山下公園側やチャイナタウン方面からはいくつかの橋があるが、好んでそこを渡る者は、世界公園にさえいない。つまり、完全孤立している地域だ。
「新港地区? 昔はショッピングモールや結婚式場、遊園地などもあって華やかだったらしいが、今は?」
「世界公園の中でどこの組織にも属さない、あるいは扱いきれなくて除名されたり、つまはじきにされた者達が流れ着く場所ということで、流刑地と呼ばれはじめて……」
マサヤがそこまで言ったとき、突然機内のスピーカーから『それは違うぜぇ!』と甲高い男の声が聞こえてきた。
マサヤもトムソンも驚き息を呑む。
『ここはな、遊園地なんだよ。世界公園の中の遊園地、どうだ、素敵だろ?』
「だ、誰だ、おまえは?」
トムソンが怒鳴るように問いかけた。
『マンバ。ここの王さ。ようこそ地獄遊園地へ!!』
耳障りな声が機内に響く。
その声の主によって乗っ取られた機体は、元新港地区へと降りて行った。
※現在の新港地区。向かって左が「みなとみらい地区」。
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