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SCENE2 元教会近辺
新興宗教団体を隠れ蓑にした犯罪者、マットや部下達の遺体が次々に運び去られていった。洗脳されていた人々も、とりあえず近隣の所轄警察署へと連れられていく。
ラズとダイゴは何もせず、黙ってその光景を見ていた。
所轄の、いわゆる「普通の警察官達」が2人にチラチラと視線をよこしてはすぐに背ける。遊撃捜査班は特殊な部署であり、そこの構成員達は同じ警察関係者から一目置かれるとともに、ある意味嫌われてもいた。
事件捜査や犯人検挙、一般市民の保護等よりも、世界公園関係の犯罪者達の速やかな抹殺に重きを置いている連中ばかりいるからだ。そこに「正義」も「使命感」もない――少なくともまわりからはそう思われていた。
去りゆく警察車両と入れ替わるようにして、一台の高級車が近づいてくる。見た目は黒塗りで重みを感じさせるが、ホバークラフトタイプなのでタイヤはなく微かに路面から浮いていた。
「チッ、イヤな野郎が来やがった……」
とたんに険しい表情になるラズ。ダイゴはその横顔を苦笑しながら見た。
高級車は音もなく止まり、後部座席から屈強そうな男2人が降りてきた。そして頭を下げ誰かを待ち構える。
最後に降り立ったのは、全身黒ずくめのスーツ、更に冷徹な空気をまとったかのような男だった。夜だというのに黒いサングラスをかけている。
柳冬馬――現協議会会長だ。
世界公園内の様々な犯罪集団は、それぞれが無軌道に活動し、反発し合ってトラブルにならないように協議会を形成している。その提唱者が柳だった。現在日本国内最大規模と言われるマフィア、大鷲ファミリーの幹部でもある。
裏組織で絡み合う利権をうまく整理し、日本の司法の手がギリギリ入らないように治めていた。警察組織とも裏取引をしており、暗躍をある程度目こぼしさせるために、パーク内の均衡に影響のない程度の犯罪に関しては、むしろ捜査や逮捕に協力もしている。そういった調整を一手に引き受けているのが柳だった。
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