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「私の視界にズケズケと入ってくんじゃねぇよ、目障りだ」
ラズが吐き捨てるように言った。柳とは因縁がある。一方的に毛嫌いしていた。
「ここは世界公園と普通の街との境目だ。騒動が起きたらどちらにも悪影響がある」
柳は淡々とした口調で言った。
「だったらすぐに消えな。いつまでもその胸くそ悪いツラを見ていたら、もう一騒動起こしたくなるぜ。なんなら今すぐでもいい」
ホルスターの銃に手をやるラズ。目は柳を睨んだままだ。
屈強そうな男達が懐に手を入れようとした。ラズに反応して銃を出そうとしている。だが、それを止めたのは柳だった。
「俺とやり合いたいんだったら、時と場所を選ぶんだな。一応刑事なんだから、そっちからふっかけるような真似はやめておいた方がいい。男ができて少しは穏やかになったんじゃないかと思ったが、変わらんな」
やれやれ、というように肩を竦める柳。
「てめえを殺せばその後は穏やかになってやってもいいぜ。シスターなみとはいわねぇけどな」
相変わらず銃に手をやったままのラズの肩を掴み、ダイゴが「まあまあ」と宥める。
「大物直々に、何の用だい? まさかパーティへの招待ってワケじゃあるまい?」
ダイゴの質問に微かに苦笑する柳。そして応える。
「マットとその組織については、協議会でも処分することが決まっていた。だから警察がガサ入れをするのは待ってほしいと言ったはずだが、渡部のダンナには聞いてないのか? しかも、逮捕どころか皆殺しとは派手にやり過ぎじゃないか?」
渡部というのは遊撃捜査班の統括責任者で、ラズやダイゴの上司だ。
「今日は様子を見に来ただけだったんだが、目の前で洗脳やら誘拐の指示やらをされちゃあ、黙っているワケにもいかなくてね。投降を求めたところ激しい抵抗に遭ったんで、やむなく応戦した、っていうことだ」
ダイゴが、ほとんど誤魔化しの説明をした。
「いつものこと、か……」
溜息をつく柳。
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