SCENE2 元教会近辺

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 「殺りたければそうすればいい。しかし今は、なかなか遊びに行くのも難しくなった。遊園地(アミューズメント)と名がついてるクセにな」  柳が肩を竦めながら言った。  「どういうことだ?」ダイゴが顔を顰める。「あそこは運河に囲まれた島みたいなものだが……」  元新港地区――現在地獄遊園地(ヘル・アミューズメント)と呼ばれる地域には、橋が6つ架かっている。そのうち「みなとみらい地区」からの3つは封鎖され使用できない。しかし、世界公園(ワールドパーク)からの3つがまだ渡れるはずだが……。  「マンバは以前から計画を立て、仲間もまとめていたらしい。あっちへ渡ってすぐに使用できる橋に高性能監視カメラと遠隔操作できるレーザーガンを取りつけた。ヤツの認めた者や無害なホームレスなんかは渡ることもできるが、協議会の関係者や他の組織からの暗殺者など敵対する連中はその姿が察知されたらすぐに撃ち殺される。当然警察関係者もそうだろうな」  「あの地区を、島の特性を活かして要塞にでもするつもりか?」  「わからんさ、狂人のやることは」柳が口元だけで笑う。「だが、何か企んでいるのは確かだな。海側にもいくつも監視カメラをつけているし、おそらく上空も警戒しているだろう」  「完全独立させて、王国ごっこでもしようってのか?」ラズが愉快そうに言った。「だが馬鹿だな。いくら警戒したところで、あんな小さな島、何かやりやがったら特殊部隊でも使って攻めていけばすぐに制圧されちまう」  「だろうな。だが、だから逆に不気味なのさ。おそらくマンバもそれはわかっている。ということは、何か一気にやらかしてすぐ逃亡するか、あるいは攻め込ませないような大がかりな仕掛けをしているのか……。いずれにしろ、この世界公園(ワールドパーク)で派手な騒動が起きる可能性がある。それを未然に防ぎたかったから、マットを通じてマンバの意図を探りたかったんだ。あんた達のおかげで台無しになっちまったが」  「そいつは残念だったな。だがそんなの、私たちの知ったこっちゃねえよ。マンバだかマンボだかしらねぇが、何かやらかしてそれが犯罪だったなら、ぶっ潰すまでだ」  ケッと吐き捨てるラズ。  その時突然、どこかで花火があがった。  ドーンと音が響くとともに、空に大輪の花が咲く。
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