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「なんだ、祭りでもあんのか?」
ラズとダイゴが目を見張った。
「方向からすると、今噂をしていた元新港地区――地獄遊園地から上げられているな……」
柳が目つきを鋭くしながら言った。
ダイゴの表情が険しくなる。同時に彼のスマホが鳴った。相手を確かめるとすぐに出る。
「今、ラズも柳もいる。まとめて話してくれ」
ダイゴがスマホを操作すると、その場にホログラムで男の姿が現れた。渡部幸四郎、遊撃捜査班の統括責任者だ。
「緊急事態が発生した」
渡部が感情を感じさせない声で言った。ホログラムが揺れる。
「マンバか?」
柳が端的に訊いた。
ホログラムの渡部がチラリと柳に視線を向ける。頷き、そしてラズとダイゴに戻した。
「カナダからの要人、トムソン・シェイナードが誘拐された。彼の通訳として同行していたマサヤも一緒だ」
「なんだって!?」
息を呑むラズ。口元から煙草型香草がポトリと落ちた。
「2人が搭乗していたミニヘリ型有人ドローンのシステムが乗っ取られ、元新港地区――地獄遊園地へ誘導され着陸した。その後拉致されたと思われる。マンバと名乗る男から県警に犯行声明が来た。要求はまだだが、地獄遊園地に海からも空からも、そして橋を渡っても、近づいた者がいる場合は攻撃するし、2人の命も保証しない、ということだけ伝えてきた」
相変わらず渡部の口調は坦々としていた。
マサヤ……。
ラズが空を見上げる。またしても花火が打ち上げられ、それがしばらく続く。美しいが、禍々しくも感じられた。
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