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なんだか、ラズとダイゴのコンビみたいだな。でも、信頼し合っている彼女達とは違い、この2人はどこかそう見せかけているだけのような気がする。
状況を忘れ、マサヤはそんなふうに感じてしまう。
「おっと、おしゃべりしている間に着いたぜ。マンバがお待ちだ。2人とも降りてくれ」
最上階まで来たようだ。車は広い駐車スペースのど真ん中に停まった。後部ドアが自動でスーッと開く。
マサヤとトムソンはいったん顔を見合わせるが、逆らうわけにもいかない。
おそらく別の階に停まったのか、続いてくる車両は一台だけになっていた。そこからラックとサーペンが降り近づいてくる。
彼らが後ろ、前にドラガとレイラ。挟まれるような形でマサヤ達は進む。
店舗がある棟へと続く通路を抜ける。
元はゲームセンターや映画館、複数のレストランがあったのだろう。所々電気が消えて薄暗く寂しいが、駐車場以上のスペースにいくつもの店舗跡が並んでいる。
その奥、一つだけ明るく輝く場所があった。入り口部分は細長いが、そこを抜けると広いフロアに出る。一面ガラス張りの窓で、世界公園やみなとみらいが見渡せた。大きなレストランだったようだ。
「स्वागत!! ようこそっ!!」
陽気な声が聞こえてきた。長身でサイケデリックなインド民族衣装を着た男が、嬉しそうに手を広げている。
「あ、あなたがマンバ?」
「वास्तव में。マサヤ君だな。ラズのキスは火薬の味がするって話だが、本当か? セックス中に滾ると暴発するらしいじゃないか。スリル満点だな?」
「彼女を侮辱しないでくれ!」
マサヤが強く言うと、マンバは目を丸くした。だがすぐに、嬉しそうに笑う。
ヒューと口笛が聞こえた。レイラだ。ドラガとラックもニヤニヤしている。
「すまん、すまん」戯けたように言うマンバ。「だがあのメス猫はこの辺りの悪党すべてを侮辱してるぜ? お互い様ってことで勘弁してくれ」
日本語のわからないトムソンが不安といらつきを顔一面に浮かべていた。マンバが今度は彼の方を向く。
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