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ラズ――早撃ちの腕は天下一品の神奈川県警所属刑事だが、雌豹、悪魔、死神……と様々な異名を持ち、悪党を殺すことが生き甲斐と嘯くとんでもない小娘だ。これまで何人もが地獄へ送られた。
最初に銃口を向けた者は、その一瞬で射殺されるだろう。それがわかっているから、安易に動けない。
さらに、ラズが現れたとなると、その恐るべき相棒もすぐ側にいるはずだ。どこから攻撃を仕掛けてくるかわからない。こうなったら争いは避けられないが、タイミングを計りかねている状況だ。誰もが、戦いの火蓋を切るための最初の生贄にはなりたくない。
「慌てなさんな、ゴミ虫ご一同様。抵抗しなけりゃ、とりあえず逮捕っていうことにしてやるよ。私にとってはつまんねぇことなんだけどな」
そう言いながら、ラズはゆっくりと教会内を歩きまわる。
「宗教活動をしているだけだ。信仰の自由を知らないか? 警察といえども邪魔はできないはずだ。越権行為だぞ」
マットが強い口調で言った。そうしながら、部下達に目配せする。頃合いを見計らい殺せ、そして相棒の方も見つけて始末しろ、と指示を含めていた。
「何が宗教活動だよ? ノストラダムスだかトリケラトプスだか知らねえが、ワケわかんねえこと言って迷っている連中の心を更に惑わせて、子供を誘拐させて、それを海外へ売りさばいて私腹を肥やしているんだろう? やってることがあくどすぎるぜ。世界公園の中でもそろそろ問題になってんじゃないのか? 世界公園の外の街へ大きな影響を及ぼす犯罪活動は、あのクソ協議会が禁止しているんじゃなかったっけ?」
横浜の中で荒廃した犯罪地域となった一帯は、世界中の犯罪シンジケートが触手を伸ばしてきており、今やその状態から揶揄を込めて世界公園と呼ばれている。何年も、幾度となく血で血を洗うような抗争を繰り返した。
そのため、お互いに疲弊することをいやがった犯罪組織間で協議会というものを形成し、悪党達ながら一定の決まり事を作って活動することになっていた。そこでは、世界公園以外の地域で薬を売りさばく、子供を誘拐するなどの禁止事項がある。この新興宗教を隠れ蓑にした犯罪組織はその掟を破ったことになる。
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