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「大富豪で篤志家のトムソン様、あんたが浄化を望むスラム中のスラムに降り立った気分はどうだい?」
問いかけられるが意味がわからず、顔を顰めるトムソン。
「マサヤ、通訳してくれ。君は七色の言葉を話すそうじゃないか。翻訳機もあるが、それより血の通った人間の言葉の方がいいだろう?」
言われるままトムソンに伝えるマサヤ。
「いったい何が狙いだ?」
端的に問い返すトムソン。
「それをこれから発表するのさ。さあ、こちらへ、ミスター・トムソン」
招き入れるような仕草で、マンバはトムソンを自分の横に来るように促した。
マサヤが言われるままに通訳すると、さすがにトムソンは躊躇う。
サーペンがスッと近づいてきて、トムソンに向かって睨みをきかせる。そして行け、と顎で示した。
渋々一歩踏み出したトムソンの腕を引っ張ると、マンバは無理矢理肩を組み、上を向く。
見ると小型カメラが設置されていた。そこに向かってニヤリと笑うマンバ。戸惑うトムソン。
「今から要求を出す。日本政府、カナダ政府、そしてトムソン様創業の大企業『ルリ・レモン』それぞれ5千万ドル。この後メールで送る世界中の口座に、24時間以内に均等に送金すること。1分でも遅れたらトムソン様はヨコハマの海で魚のエサになる。巻き添えを食った哀れな通訳も一緒だ。これ以降連絡しない。交渉は受け付けない。さっきも伝えたように、地獄遊園地へ警察やら軍隊やらが近づいたり侵入しようとしたらその時点でゲームは終わり、2人の命はない。っていうことで、नमस्ते~」
それだけ言うとマンバは後方を振り返り、ピースサインを送る。
気づかなかったが、たぶんレストランとして使われていた頃は厨房だったと思われる方にもう1人いた。白衣を身に着けモニターを前に機器類を操作している。その様は科学者のようにも見えた。
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