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「メールも送ったか、ニノミヤ?」
「抜かりはない」
ニノミヤと呼ばれた男は立ち上がるとつかつかと歩いてきてマサヤに向き直った。
「君が優秀な通訳として有名なマサヤ君か」
「そ、そんなに優秀でも有名でもないと思いますが……」
「いや、あらゆる国の言語に方言も含めて精通しているそうじゃないか。その優秀さを世界公園のために活かそうとするなんて尊敬できるね。聡明で責任感のある人間は好きだよ。私は二宮銀治郎という。よろしく」
手を差し出すニノミヤ。戸惑いながらマサヤは握手した。
「で、でも、あなたもマンバの仲間なんですよね?」
「マンバがこの地域を支配すれば、きっと良くなる。スラム街の浄化に協力しているのさ。協議会なんていう悪党の集まりに任せていては、いつまでもここはゴミ溜めのままさ」
「人を誘拐して大金を要求するのもかなりな悪党だと思いますが……」
口に出してしまい、慌てるマサヤ。マンバやドラガ達の視線に気づき背筋が凍る思いがした。
「言ってくれるじゃないか、マサヤ。そう、俺は悪党だ」マンバが不敵な笑みを浮かべた。「だが悪党も突き抜けて大悪党になれば、その後は救世主になれるのさ」
愉快そうに笑うマンバの向こうで、レイラがウインクしてきた。
「救世主って……」
唖然とするマサヤ。マンバがいったい何を考えているのかわからない。大金をせしめてそれを元手にこの世界公園を牛耳る存在になろうとしているのか? あるいはそれ以上の何かを……?
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