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SCENE6 世界公園《ワールドパーク》の港
地獄遊園地を囲む運河はそれほど幅はない。だがさすがに泳いで渡るのはキツイし、たぶんすぐに発見されるだろう。
ラズとダイゴは海側から入り込む計画を立てていた。そのための装備が来るのを今待っている。
マサヤ……。
ラズは険しい表情で地獄遊園地の方を睨む。
「焦る気持ちはわかる。だが相棒、おまえも知ってるだろう?」ダイゴが歩み寄り、例の煙草型香草を差し出した。「あいつには妙な運みたいなものがある。それに、悪党も善人も関係なく、どこか人を惹きつけるようなところもある。無事にまた会えるさ。そういやぁ、あいつキャンピングカーを買ったんだってな、ローンで。それでラズをいろんな所に連れて行ってやりたい、って言ってたぞ。この件が終わったらどっか行けよ、2人で」
「べ、別に、そんなことどうでもいい。私達はこういう仕事をしているんだ。いつ命を落とすかわからないし、常にその覚悟はできてる。あいつだって遊撃捜査班に入ってきた以上、それは同じだ」
吐き捨てるように言って香草に火をつける。しかし、胸の奥がチクリと痛んだ。
「ふふ、まあいいさ。と言っても、あの色男のことはおいといたとしても、焦りたくなるけどな」
24時間というタイムリミットがある。カナダからの特殊部隊がやって来て日本の警察と連携をとり何らかの作戦が実行されるのは、更にその数時間前になるだろう。
世界公園内の事件に遊撃捜査班以外、それも海外の部隊が介入するのはあまり気持ちの良いものではない。例え今回のような厄介な状況でもだ。
できることなら自分達だけで何とかしたい……。
その思いを、流れる時がかき乱していく。
そこに音もなく現れたのは、また柳の乗るホバークラフト車両だった。
「どうやら、中で動きがあったらしい」
降りるなり柳が世間話でもするように言った。
「どうせロクな動きじゃないんだろう?」
ダイゴが溜息混じりに訊く。ラズは目つきで先を促した。
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