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「地獄遊園地には、マンバが統一しつつあるとはいえまだ悪党グループがいくつか屯している。それに、どこにも属さないはぐれ者もいる。そういうのに紛れて、こっち側のマフィアではマンバの隙を狙わせるようにスパイや暗殺者を潜り込ませているところもあった。そのうちの、おそらくチャイニーズ・マフィアから派遣されていた連中が動き出したようだ。トムソンをマンバから横取りしようとしているんだろう。そして、あわよくばマンバも殺る」
「そう上手くいくかな? よしんばいったとしても、俺達からしたら敵が変わるだけの話だろう?」
「そうだな。もし首尾よくいったとしても、そいつらはどのマフィア所属かあかさないままで、マンバのやろうとしていたことを引き継ぐだけだ」
「その情報は、別のスパイが知らせてきたのか? あんたらも協議会でつながってるとはいえ、裏のかき合いをしているわけだ」
「まあ、そういうことだ」肩をすくめる柳。「実は俺もスパイを送り込んである。今はこんな状況だから、おおっぴらに連絡を取り合うわけにはいかないけどな。ヘタなことして傍受されたらそいつが危ないんで、しばらく情報はきていない。だが、あんたら2人があっちへの侵入に成功して、もし会えたなら協力し合ってもらってかまわんよ。そいつは、俺と渡部さんが通じていることは知っている」
「てめえの部下の力なんか借りるかっ!」
それまで黙っていたラズが怒鳴った。
「まあ、保険みたいなものさ。腕のたつヤツだぞ。俺の仲間だという印はこれだ」
柳が腕の時計を軽く操作すると、前の空間に鷲をかたどったエンブレムがホログラムで現れ、そして消えた。
「ふん、日本最大のマフィア、大鷲ファミリーのエンブレムじゃねえか。そこの暗殺者かなんかだろう? 誰がそんなヤツと協力なんてするか! 私ら2人だけで充分だ!」
最後は吐き捨てるように言うラズ。
「マンバと手下達は、けっこう手強そうだぞ? おそらく今動き出したどこかのマフィアの連中も殲滅されるだろう。なめてかからない方がいい」
「大きなお世話だ。てめえを殺すまでは私も死なないから、安心しろ」
柳を睨みつけるラズ。
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