SCENE6 世界公園《ワールドパーク》の港

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 「今更何を言ってるんだい? 私がたいていのことはお見通しだって、これまでのことでよくわかっただろうに」  フン、と鼻で笑うмолитва(マリートヴァ)。いつの間にか手を前に出している。そこには丸い水晶が乗っていた。  「確かにあんたはよくわかんねぇ力を持ってるみたいだよな。じゃあ、拉致ったのが誰かもわかってるんだな?」  ラズが訊くとмолитва(マリートヴァ)はつまらなそうに肩を竦める。  「アホなインド人の姿が見えるよ。だけど、そいつが表に立ってるけど、どうもそれだけじゃあなさそうだね。もっと込み入っているようだ」  どういうことだ? と怪訝な表情で顔を見合わせるラズとダイゴ。  このмолитва(マリートヴァ)には以前も力を借りたことはある。本当に妙な千里眼みたいな能力を持っているようだし、何より世界公園(ワールドパーク)の中で占いなどという怪しげな商売を長く続けているだけに、情報通でもあった。  「まあ、そんなことはいいさ。悪党どもの事情なんかに興味はない。それより、おまえ達あっちに乗り込んで、闇雲に探しまわるつもりかい、恋しい色男を」  「誰が恋しいなんて言った!」  молитва(マリートヴァ)の言葉にくってかかりそうになるラズ。今度はそれをダイゴが「まあまあ」と止めた。  「ごみクズのようになって朽ち果てていく運命だった小娘に、もしかしたら幸運をもたらしてくれるかもしれない男だ。救ってやれるものならちょっとだけ協力してやってもいいよ。そう思ってきたんだ」  「何ワケのわかんねぇこと言ってんだ、ババア」  睨み続けるラズだが、胸の奥はざわついていた。マサヤが自分にとってどれほど大きな存在か、この老婆はズケズケと突きつけてくる。  「協力ってのは、どういうことだ?」  黙って成り行きを見守っていた柳が問いかけた。彼もмолитва(マリートヴァ)の持つ力は知っている。  彼女は手にした水晶を凝視した。それは光源もないのに薄い光を放ち始める。  その不可思議な光景に、誰もが口を閉ざして見入った。
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