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「今更何を言ってるんだい? 私がたいていのことはお見通しだって、これまでのことでよくわかっただろうに」
フン、と鼻で笑うмолитва。いつの間にか手を前に出している。そこには丸い水晶が乗っていた。
「確かにあんたはよくわかんねぇ力を持ってるみたいだよな。じゃあ、拉致ったのが誰かもわかってるんだな?」
ラズが訊くとмолитваはつまらなそうに肩を竦める。
「アホなインド人の姿が見えるよ。だけど、そいつが表に立ってるけど、どうもそれだけじゃあなさそうだね。もっと込み入っているようだ」
どういうことだ? と怪訝な表情で顔を見合わせるラズとダイゴ。
このмолитваには以前も力を借りたことはある。本当に妙な千里眼みたいな能力を持っているようだし、何より世界公園の中で占いなどという怪しげな商売を長く続けているだけに、情報通でもあった。
「まあ、そんなことはいいさ。悪党どもの事情なんかに興味はない。それより、おまえ達あっちに乗り込んで、闇雲に探しまわるつもりかい、恋しい色男を」
「誰が恋しいなんて言った!」
молитваの言葉にくってかかりそうになるラズ。今度はそれをダイゴが「まあまあ」と止めた。
「ごみクズのようになって朽ち果てていく運命だった小娘に、もしかしたら幸運をもたらしてくれるかもしれない男だ。救ってやれるものならちょっとだけ協力してやってもいいよ。そう思ってきたんだ」
「何ワケのわかんねぇこと言ってんだ、ババア」
睨み続けるラズだが、胸の奥はざわついていた。マサヤが自分にとってどれほど大きな存在か、この老婆はズケズケと突きつけてくる。
「協力ってのは、どういうことだ?」
黙って成り行きを見守っていた柳が問いかけた。彼もмолитваの持つ力は知っている。
彼女は手にした水晶を凝視した。それは光源もないのに薄い光を放ち始める。
その不可思議な光景に、誰もが口を閉ざして見入った。
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