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「色男と金持ちは、6階建てのビルの5階の部屋にいる。昔映画館やらレストランやらがあったところだね」
しばらくすると、молитваがそう説明する。
「ワールド・ポーターズの跡地だな」柳が言った。「なるほど、マンバが拠点にするには良い場所だ」
「間違いないんだろうな、ババア?」
ダイゴが訊く。
「ああ。違ってたらバナナを好きなだけ食わしてやるよ」
「てめえ、人をなんだと思ってやがる!」
「人? 冗談はおよし」
やり込められ「くっ!」と言葉につまるダイゴ。しかし、いつまでもそんなことをしているヒマはない。ラズに向き直る。
「行こうぜ。このババアの言ったことが本当かどうか、確かめるのも楽しみだ」
ラズは頷くと歩き出す。途中、молитваをチラリと見た。
「うっとうしいことばっか言いやがるけど、この件についてだけは礼を言うぜ」
「ほう、少しだけ成長したね、小娘」
「うるせえ」と吐き捨てるように言うと、ラズはコージの頭をはたく。「おめえも行くぞ。早くしろ」
「痛てて……」頭を抑えながら彼がついてくる。「マサヤさん、大丈夫ですよね?」
心配そうな顔になっていた。コージも以前の事件の際にマサヤを知り、なぜか気に入っているようだ。
「知るかよ……」
言い捨てるラズ。ダイゴが間に入る。
「あいつのしぶとさはおまえも知ってるだろ? 俺らを海に下ろした後は、帰還記念パーティの手配でもしながら待ってろ」
了解、とでもいうように敬礼するコージ。その向こうで柳も準備を始めた。
よし、今から行くからな、マサヤ……。
小型船に乗り込む前に、ラズはもう一度地獄遊園地の方を睨むように見た。
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